ホーユーと藤田医科大学の研究成果が日本皮膚免疫アレルギー学会で優秀演題賞「銅賞」を受賞
~化粧品等が関連する食物アレルギーの研究~

ホーユーと藤田医科大学の研究成果が日本皮膚免疫アレルギー学会で優秀演題賞「銅賞」を受賞

ホーユー株式会社(本社:愛知県名古屋市、代表取締役 社長執行役員:佐々木 義広、以下ホーユー)と学校法人藤田学園 藤田医科大学(本部:愛知県豊明市、理事長:星長 清隆、学長:湯澤 由紀夫、以下藤田医科大学)は、2022 年 12 月 16 日~18 日に開催された第 52 回日本皮膚免疫アレルギー学会学術大会で、共同研究成果としてコチニールアレルギーが増加傾向にあること、従来とは異なる新たな感作源が存在する可能性があることについて発表し、優秀演題賞(銅賞)を受賞いたしました。なお、本学術大会において、ホーユー株式会社と藤田医科大学の共同研究成果が優秀演題賞を受賞するのは、今回で 4 年連続となります。

優秀演題賞について

日本皮膚免疫アレルギー学会学術大会では、研究発表に対して新規性および独創性、解析方法の妥当性、社会へのインパクトなどを選定基準として、毎年、優秀演題賞が選定されています。第 52 回の学術大会では約 160 演題の発表があり、優秀演題賞として金賞 1 件、銀賞 2 件、銅賞 7 件が選定され ました。

受賞演題

題 目:2016 年以降に確認されたコチニールアレルギー11 例の解析
演 者:中村 政志 1,2, 佐藤 奈由 1,2, 鈴木 加余子 3,4, 二村 恭子 3,4, 鷲尾 健 5, 平瀨 敏志 6, 鈴 木 慎太郎 7, 松本 崇直 8, 杉浦 真理子 9, 山元 純子 10, 川出 桃歌 2, 矢上 晶子 3,4, 松永 佳世子 1
(1 藤田医科大学 アレルギー疾患対策医療学, 2 ホーユー株式会社 総合研究所, 3 藤田医科大学 総合アレル ギー科, 4 藤田医科大学 総合アレルギーセンター, 5 神戸大学 皮膚科, 6 甲南医療センター 小児科, 7 昭和大 学 呼吸器・アレルギー内科, 8 自治医大学附属さいたま医療センター 皮膚科, 9 第一クリニック 皮膚科・アレルギー科, 10 済生会高岡病院 小児科)

発表概要

コチニール色素*含有の食品摂取後にアナフィラキシー等を発症した事例が複数報告されており、2012 年 5 月には、消費者庁より「コチニール色素に関する注意喚起」が、厚生労働省より「コチニール等を含有する医薬品、医薬部外品及び化粧品への成分表示等について」が出されています。
 我々は、日本における 2016 年までのコチニールアレルギーを調査し、28 例の症例が確認されたこと、内 25 例がアナフィラキシーを経験した重症例であったこと、多くは主要抗原である CC38K と呼ばれるタンパク質に感作が見られたこと 1)、半数以上でコチニール関連色素を含む赤色の化粧品での皮膚アレルギー症状の経験があったことを報告しています 2)。
 その後もコチニールアレルギーの症例が散見されていることから、本研究では、2016 年以降のコチニールアレルギー症例について調査いたしました。
*赤色の天然由来色素で、食品や化粧品などの着色料としても使用される成分。

 全国の医療機関との多機関共同研究[プロテオミクス手法による各種アレルギー疾患の要因解析(倫理審査委員会承認番号:HM22-269, 研究代表者:松永佳世子教授(藤田医科大学医学部アレルギー疾患対策医療学))]において、臨床研究データベース(MINERVA)に 2016 年以降に新規に登録されたコチニールアレルギー症例の登録年、性別、年齢、抗原などの解析を行いました。
 その結果、2016 年以降に新たに 16 例の症例が確認されました。これまで同様に成人女性が 14 例で多く、2 例は男性でいずれも未成年でした。化粧品による感作と推定される症例は女性 14 例中 10例で、従来は口紅が多い傾向にありましたが、本調査ではアイシャドウが多く見られました。抗原解析はコチニールカイガラムシの 2-D immunoblotting により行われ、主な感作抗原は従来通り CC38Kでしたが、2022 年に登録された 6 例では CC38K には明らかな感作を認めませんでした(図1)。

図 1 コチニールカイガラムシの 2-D immunoblotting の結果
症例特異的にIgE抗体が検出されたタンパク質に黄色線と番号を付記し、感作率を算出しました。

本研究によって、コチニールアレルギーの症例が年次的に増加傾向にある可能性も考えられました。 感作の原因と疑われた化粧品にアイシャドウが多くなった理由として、コロナ禍によるマスク生活が影響した可能性が考えられました。2022 年登録の症例で CC38K の感作が認められなかったことは特徴的であり、従来とは異なる感作源が新たに存在した可能性も考えられました。

展望

 現在でも化粧品に含まれる成分が原因で生じる食物アレルギーは存在します。その代表的な事例の一つが、コチニール色素による食物アレルギーであり 3)、本研究ではその現状をまとめ、報告いたしました。本研究成果は、医療に携わる方だけでなく、消費者の方、また化粧品メーカーにとっても有用な知見として、化粧品の安全性向上に寄与するものと期待されます。
 ホーユー株式会社では、積極的にその成果を臨床現場にフィードバックする施策として、2022 年11 月 1 日より、医療機関向けアレルギー受託解析サービスを開始しました。ホーユー株式会社は、継続的にアレルギーに関する知見の探求を行い、また医療への貢献を通じて一人でも多くのアレルギー患者さんのQOL(生活の質)を改善できることを願っております

参考文献

1) Y. Ohgiya, et al., Molecular cloning, expression, and characterization of a major 38-kd cochineal allergen., J. Allergy Clin. Immunol., 123(5), 1157-1162 (2009)
2) N. Takeo et al., Cochineal dye-induced immediate allergy: Review of Japanese cases and proposed new diagnostic chart., Allergol. Int., 67(4), 496-505 (2018)
3) 「トピックス◎「茶のしずく石鹸」再来か? 「魅惑の赤色口紅」が原因でアナフィラキシーに」, 日経メディカル, 2022 年 5 月 11 日掲載

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