「ヘアカラー剤のあり方に新風を吹き込んだ先駆者」COLOR creators Vol.1 野村 卓央
2023.06.30
”COLOR
YOUR HEART
心に彩りを”
ヘアカラーがもたらすのは、見た目の変化だけじゃない。
髪色とともに気持ちまで美しく染め上げ、生き生きと輝く毎日へと導いてくれる。
そんな思いのもとに多彩な色を創り出し、日々を鮮やかに彩るホーユーの社員を、私たちは「COLOR
creators(カラークリエイターズ)」と名付けました。
ホーユーの彩りを形作る人々にフォーカスしてご紹介する特集の第1回目。
今回は、2023年2月まで商品企画室に在籍し「先駆者」として、それまでになかった商品の企画開発に力を注いできたコンシューマーマーケティング本部
LTV推進室 CRMメディア課・野村 卓央が語ります。
COLOR creators(カラークリエイターズ)
コンシューマーマーケティング本部 LTV推進室 CRMメディア課 課長
野村 卓央
ドラッグストアをメインに担当する市販品の営業を約11年経験したのち、メンズビゲン、シエロ、ビューティーンなどの商品企画に約13年携わる。
- 目次
発想の転換で、失敗を成功へ
野村の社会人としてのキャリアは、ドラッグストアの担当者と商談をし、店頭に自社の商品を置いてもらうことから始まりました。
「小売店を担当し、商品の陳列方法を決める棚割りを提案していました。どうすればお客さまの目に留まりやすく、選んでいただきやすいのか。市場のトレンドにも注視しながら、効果的な配置方法を模索し、提案するのが、営業時代のメインの仕事でした」
日々の業務を通じて、お客さまに商品を届けるための、流通の構造が理解できたといいます。
そして、このときに店頭で交わしたお客さまの言葉や表情が、“ものづくりに関わってみたい”という思いに繋がっていきました。
「メーカーに入ったからには、いつかはものづくりに携わってみたい。そして、いままでにない製品を世に送り出してみたいという気持ちは、自分の中につねにありました」
未提案分野開拓の礎となった メンズビゲン
そんな野村の希望は、商品企画課に異動したことで叶います。最初に自分で担当した、男性向けのヘアカラー剤 メンズビゲン を手がけることになったときのことです。
「メンズビゲンというブランド自体はすでにあったのですが、男性に向けてまだ提案できていない分野を開拓するべく、白髪が生え始めた方への商品を提案しました」
白髪染めの入り口に当たるこの商品は、時間を置くことによって染まり方をコントロールできるものでしたが、
テスト調査では『魅力を感じない、コンセプトがよくわからない』と、評価はさんざんなものだったといいます。
「研究員が苦心して処方を作ってくれたのに、コンセプトがまずくて賛同が得られないことが悔しいやら申し訳ないやら……。どうにか活用できないかを考える日々を過ごしました」
思ったように計画が進まず、このままでは暗礁に乗り上げてしまう。そう危ぶまれていたある日のことでした。
新製品の開発時には必ず、コンセプトに沿ったモデルの頭髪で染まり方のテストをします。
しかしこの日に来たのは、白髪が多いターゲット違いのモデル。それでもテストしてみたところ、きれいなグレーヘアに染まったのです。
さらに、その頃たまたま自宅のTVで見かけたのが、男性有名人のロマンスグレーの髪色。
生え際と毛先の色が違っていることに気づいたときに、これは白髪ぼかしだ!
とハッとしたといいます。
“白髪ぼかし”はサロンのメニューにもあり、白髪が多い人でも目立たなくさせる技術。
「男性の、それも年配の方が白髪ぼかしをするんだということに気がついて、一気にコンセプトを変えることにしたんです」
こうして、野村の気づきと発想の転換から生まれた
メンズビゲン グレーヘア
が市場に出回ります。
グレーヘアが流行語にもなる、ずっと以前のことでした。
「自分が開発した商品が店頭に並んでいるのを見たときは、まるで我が子のように愛おしく、感動もひとしおだったことを覚えています」
“どれも同じ”ヘアカラーに差をつけたい! ビューティーン
次に野村が挑戦したのが、当時販売していた ビューティーン
のリニューアルでした。
ビューティーンは、1990年代に巻き起こった茶髪ブームで多くの若者に支持されたブランドでしたが、2000年代以降はブームが沈静化し、ブランドそのものの存在意義を問われていた時期にあったといいます。
「同年代の男性の気持ちはわかりますが、当事者ではない10〜20代の女性のことは僕にはよくわかりません(笑)。なので、原宿や渋谷に行って、道行く人を眺めていました」
事前にファッションやヘアメイク雑誌、SNSなどを片っ端から見て、響くキーワードを頭に叩き込みます。
「ブリーチしてアッシュを入れた髪色を外国人風とか透明感と表現していたり、このファッションだからこんな髪色など"カワイイ”を定義していたり……。メディアで見るそういったワードを、実際に自分の目で見ることで答え合わせをしたくて通いました」
みずから足を運んで街頭ウォッチングを重ね、アンケート調査もしていく中で、ブリーチ(脱色)してからのヘアカラーもいとわないという、色へのこだわりが人一倍強い若者たちがいることに野村は着目します。
「社内に提案しても、“黒髪に施してちゃんと色を出すのがヘアカラー”という常識が根強く、なかなか賛同してもらえない。『ブリーチ前提のヘアカラーなんて売れるの?』と。そこで、そういった若者の生の声を聞いてみようと、美容やファッション系の専門学校さんに協力をいただいて、グループインタビューを実施したんです」
そこで耳にした彼らの言葉に、長年ヘアカラー剤に携わってきたホーユーの社員たちも衝撃を受けました。きれいに色を入れるためのプロセスとして、ブリーチはするのが当たり前。
中には、最高で4回ブリーチしたことがあるというツワモノも。
とくに野村をはじめ、商品開発メンバーの胸に刺さったのが、『市販のカラー剤なんて、どうせどれを使っても一緒でしょ』という一言でした。
「おう、じゃあやってやろうじゃないか!サロンに負けないカラー剤を作ってみせる、と、内心でガゼン火がつきました(笑)。僕らはそんな尖ったニーズを持つ彼らを“発色重視層”と名付け、ビューティーンを根底から変えた個性派カラーの開発を提案したんです」
通常の染め方で楽しむ商品なら、ホーユーには
ビューティラボ
がある。
それならビューティーンでは思いっきり尖った色に振り切ってみようじゃないか、と、それまで社内にあった常識を覆し、ブリーチというワンステップを加えたことで、鮮やかな色出しに成功。
まさに攻めの
ビューティーン メイクアップカラー 誕生の裏側には、こんなストーリーがあったのです。
若い世代を中心に一躍話題を集めた新しいビューティーンは、その後も発色を上げるためにリニューアルを重ね、色のラインアップを変えながら安定した人気をキープしています。
ヘアカラーの可能性を広げる 色で選ぶ白髪染め シエロ デザイニングカラー
そんな野村の胸の内には、営業時代から温めてきたひとつの思いがありました。
それは、カラー剤における「白髪染め」と「おしゃれ染め」の壁をなくすことでした。
「昨日までおしゃれ染めを楽しんでいた方が、今日からは白髪染めってどうなんだろうと。実際に、初めて白髪染めをするお客さまからも『なんだか向こう岸に渡っちゃうみたいで寂しい』という声をいただいていました。なぜそういう商品をメーカーとして作れないのか、という思いがずっとあったんです」
白髪染めは基本的に明度軸が主体であるため、明るさの違いを軸に色を選ぶのが常識でした。
白髪も染まり、色みも楽しめるカラー剤がないことに疑問を持っていた野村は、シエロ でチャレンジすることを決めます。
「当時のシエロは、すでに発売20年を超すロングセラーブランド。そのタイミングで、若返りというか、それまでにないものを作りたかったんです」
野村が提案したのは、おしゃれ染めのように色みを軸とし、アッシュを豊富にカラーバリエーションに持つ白髪染め。
ところが、従来の白髪染めとは色づくりの考え方がまったく違うため、品質基準や性能設定などの技術面で難航します。
「明度を上げることで色みは出せるんですが、髪に極力ダメージを与えずに、白髪と黒髪をバランスよく染めるのがとても難しかったんです」
野村が特に目指したアッシュは、ビューティーンの代表格ともいえるグレーアッシュ。同じ色を白髪染めで再現するために、研究員とは何度も議論を重ねました。
「色がコンセプトの製品だったので、何としてもそこだけは妥協できなかった。お互いに譲れずに、衝突したことも少なからずありましたね」
時間はかかったものの、最終的にビューティーンと新製品を半々の頭髪でテスト。
「ビューティーンでは染まらなかった白髪が、きれいにアッシュに染まったときには、研究員とがっちり握手したことを覚えています」
『白髪染めでアッシュカラーが楽しめるなんて思っていなかった』
『毎回色みを変えられて、気持ちが前向きになった』
『こんな商品を待っていた!』
野村の長年の思いを形にした シエロ
デザイニングカラー には、発売直後からお客さまの喜びの声が次々と寄せられました。嬉しい驚きだったと微笑む野村にとっても、もっとも思い入れの強い商品になったといいます。
「ヘアカラーで“変身”できる」心のときめきを伝えていきたい
髪の色を変えることは、見た目はもちろんのこと、気分までも変えてくれるもの。
そればかりか、ファッションやメイク、ひいては人との交流や日々の過ごし方にも変化をもたらすきっかけとなるかもしれません。
野村は語ります。
「髪を染めるだけで、変身ができる。そんな、何気ないようで奥の深いヘアカラーの楽しみ方や喜びを、これからもずっと、お客さまに伝えていきたいですね」
あなたにとっての心の彩りとは?
「部下がお客様を想って楽しく仕事をしてくれること」
ーー社内で上司の目を気にしていても、いい商品は生まれません。管理職となったいま、部下には『つねにお客さまの方を向いて』と伝えています。
調査などを通して出会った一人ひとりの顔を思い浮かべながら、『あの人にこの商品を届けたい』という強い想いを持っていれば、大変なときでも踏ん張れるし、働くうえで一番大事なことだと思っています。そうやって楽しく仕事をしている部下を見ることが、自分にとっての心の彩りです。
あとがき
お客様に喜んでいただけるヘアカラーを開発するという野村の誠実な想いが伝わってきたインタビューでした。
ホーユーにはヘアカラーに熱い想いをかける社員がたくさんいます。一人一人が違う役割を持ち、個性を発揮しながら活躍しています。
COLOR
creators Vol.2では、ヘアカラーやカラートリートメントなど数々の商品の製剤を手がけてきた研究員が想いを語っています。
COLOR creators Vol.3では、原料から製品出荷に至るまでホーユー製品のクオリティを堅固に守り続けている社員が想いを語っています。