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Life with Colors〜わたしを彩る色~|Vol.01 久保木 亜紀さん

Life with Colors〜わたしを彩る色~| Vol.01 久保木 亜紀さん

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私たちLICOLOは「髪から自分を好きになる」をスローガンに、ヘアファッションを通して今の自分を好きになるきっかけを提供する美髪情報サイトです。
運営元であるホーユーのコーポレートスローガン”COLOR YOUR HEART 心に彩りを”とあわせて、髪の美しさを通して心からの豊かな美を創造・提供していきたいと考えています。

そこで今回から、私たちが考える“心からの豊かな美”を実現している方々にインタビューをおこなう連載企画をスタート。
自分らしい髪色を楽しみながら、社会で華々しく活躍している様々な業界の方を招き、ご本人の人生と髪色のあり方をひもといていきます。

第1回にお招きしたのは、イラストレーターの久保木亜紀(くぼき あき)さん

36歳で日本でのキャリアを捨ててタイに移住し、その後オーストラリア、インド、ジョージアと世界各地へ移住した体験を描いたエッセイマンガをInstagramで投稿。
YouTubeではアクリル絵の具を使った色鮮やかなイラストの制作過程の動画も発信しています。
素敵なピンクのヘアカラーが目を引くアキさんですが、この色にチャレンジしたのは2022年と最近のことだそう。現在の髪色にいたるまでには、どのようなストーリーがあったのでしょうか。

Life with Colors〜わたしを彩る色~| Vol.01

久保木亜紀さん

イラストレーター

久保木 亜紀さん

1978年生まれ、宮崎県出身。36歳のときにキャリアを捨てて単身タイへ移住。タイのクラブチームに所属していたプロサッカー選手・久保木優さんと出会い、その後結婚。二人の出会いや海外移住先でのユニークな体験を綴ったエッセイマンガ「アキニッキ」が人気を集めている。優さんが選手から指導者へと活動の場をシフトするのに伴い日本に帰国し、2021年に宮崎県、2023年に愛媛県へと移住。

目次

クライアントのために絵を描く日々から脱却 
自分を表現したい気持ちが人生を変えた

クライアントのために絵を描く日々から脱却

ーーイラストレーターとして活躍している久保木亜紀さんですが、幼い頃はどんな子どもでしたか?

久保木亜紀さん
物心ついたときから絵を描くことが好きな子どもでした。小学生の頃はマンガに夢中で、放課後に友だちと集まって好きなキャラクターのイラストを描いていましたね。
絵を描くことはずっと好きでしたがマンガ家を目指すことはなく、上京して進学した美術大学ではイラストレーションコースを専攻しました。
ストーリーを考えるのが苦手なのと、同じ絵を描き続けるよりもいろいろな絵に挑戦したいと思っていたんです。

――大学在学中からイラストレーターのお仕事を始めたそうですね。

久保木亜紀さん
初めはWeb広告やホームページ用のイラストを描いていました。
どんな絵を描くのも楽しかったのですが、クライアントの要望にあわせて絵を描く日々が続くなかで「私が本当に描きたい絵は何だろう?」と悩むこともあって。
でも、当時は自己表現としての絵やイラストを研究する時間と余裕が自分にはなかったんです。

久保木亜紀さん(恩師・安達稔 氏との一枚)

▲東京で暮らしていた頃の恩師・安達稔 氏との一枚

――それから東京を離れてタイに移住するまでは、どんな経緯があったんですか?

久保木亜紀さん
きっかけは2011年の東日本大震災でした。大きな被害を目の当たりにして「私も何かに貢献したい、誰かを助けたい」と強く感じるようになったんです。
そこで10年以上住んだ東京を離れて宮崎へ戻り、震災から3か月後には美大受験者のためのアートスクールを開校しました。

美術の世界を目指す学生たちと触れあううちに初心を思い出して「やっぱり自分の表現を突き詰めたい」と決意。

今思えば、それが人生のターニングポイントになりましたね。

久保木亜紀さん

久保木亜紀さん
スクールの開校と並行して、当時は婚活もしていました。両親から結婚を急かされていたし、私も「両親が言うことなら当たり前」と思っていたんです。
ただ、結婚相談所の方が言うには私の経歴は婚活にとってマイナス。大学を出てフリーでバリバリ働いて、今はスクールを経営していると聞いたら男性は引いてしまうって言われちゃいました。

今まで頑張ってきたことを否定されたように感じましたが、どこか納得している自分もいて……。それから時間が過ぎ、結婚を半ばあきらめていた36歳のときに、妹に誘われて旅行したのがタイだったんです。

久保木亜紀さん

▲妹と一緒に行ったタイ旅行で、初めてゾウと触れ合った瞬間

――最初は旅行がきっかけだったんですね。初めて訪れたタイの印象は?

久保木亜紀さん
街全体から感じるパワーが刺激的で、一瞬で好きになりました! タイではLGBTの方が手を繋いで街を歩いたり、郵便局やデパートで働いたりと、ごく普通に生活しているんです。
日本だと理解を得るのもまだまだ大変なのに、様々な人が社会に溶け込んでいる姿を見て「なんて寛容な国なのだろう」「私が独身であることなんて、たいした問題じゃないんだ」って気づいたんです。
すぐにでもこの国で暮らしたいと思い、旅行から1か月後にはスーツケース1つでタイに旅立ちました。

多彩な環境や文化の違いを経験し
価値観が変わった海外生活

アキニッキ

▲Instagramで投稿しているエッセイマンガは、2023年7月で連載6年目に突入。夫・優さんとの出会いから結婚に至るまでの出来事や、結婚後の二人の暮らしを発信している

(Instagram アキニッキより引用/画像左画像右

――移住後の海外生活はエッセイマンガに詳しく描かれていますね。

久保木亜紀さん
タイに移住した年に夫と出会い、様々な出来事を経てその2年後に結婚しました。
Instagramのマンガは夫の勧めがきっかけで、2018年から連載しています。

マンガは高校生以来描いていなかったので最初は断ったのですが「下手でも大丈夫だから、やってみなよ!」と夫に言われて渋々と(笑)。
趣味としてスタートしたマンガもすっかり長期連載になりましたが、読者のみなさんのコメントやDMに励まされて楽しく続けられています。

久保木亜紀さんと夫の優さん

▲夫の優さんとオーストラリアで撮影

――ご結婚後はプロサッカー選手である優さんの活動場所にあわせてオーストラリア、インド、ジョージアへ移住されています。海外生活ならではの気付きや学びはありましたか?

久保木亜紀さん
数えきれないほどありました。たとえばオーストラリアは私が初めて訪れた移民・多文化国家です。
オーストラリアでは父母や祖父母が他国からの移住者であることが多く、髪や瞳の色はみんなバラバラ。
語学学校には欧米系の人もいればアジア系の人もいて、誰が先生で誰が生徒なのか分からないなんてこともありました。

“オーストラリア人”というのは単純に国籍を表す言葉であって、人種を表していないんです。
それまでの私は自分が思っていた以上に、人の外見から国籍を判断していましたが、決してそれが普通ではないことに衝撃を受けました

インドでの久保木亜紀さん

▲インドの市場にて

久保木亜紀さん
インドではモノの価値に対する意識に衝撃を受けました。
たとえば100円で買える商品が1,000円で売られていたら、私たち日本人なら「ぼったくりかな」って思いますよね? でもインドではお互いに交渉して商品の値段を決めていくのが当たり前。
売る人も買う人も“自分にとっての価値”や意見をはっきりと伝えなければ快適に暮らしていけないんです。このときの経験から、私もはっきりと自己主張ができるようになりました。

――様々な経験が今の自分につながっているんですね。「海外移住は憧れるけれど、なかなか一歩を踏み出せない」という方にアドバイスはありますか?

久保木亜紀さん
海外移住は慣れ親しんだ日本社会から飛び出すこと。
仕事を辞めて、部屋も解約し、新しい環境に飛び込んで……いままであった“普通”や帰る場所がなくなることに不安を感じる気持ちもわかります。

でも、世界から見ると日本は衣食住が十分で、とても暮らしやすい安定した国です。
もし海外での移住に失敗したと思ったら、帰国してまた仕事や住居を探せば、きっと以前と同じ生活にすぐ戻れるはず。
そう考えると、一歩踏み出す勇気が湧いてきませんか?

ピンクの髪色は表現への挑戦 
自分を“作品の一部”として見せたい

久保木亜紀さん

――エッセイマンガの他にイラスト作品の制作風景も動画で発信されています。手やペイントローラーでキャンバスに直接絵の具を塗り込む描き方が特徴的ですよね。

久保木亜紀さん
私には光と影の中にさまざまな色が見えています。その色を再現するには、パレットで色をつくらずに、キャンバスの上で色を重ねて変化をつける描き方が一番自然でベストだったんです。

――作品に使う色やモチーフにはどんなこだわりがあるのでしょうか?

久保木亜紀さん
イラストにはアクリル絵の具を使っていて、使う色は基本的にイエロー、ピンク、ターコイズグリーン、白の4色。
自分が「心地よいな」と感じる色を選んだ結果、光の三原色に近い3色と白になりました。モチーフは私が宮崎県出身で、タイの自然や動物が好きなこともあり、南国の雰囲気を感じる植物や動物を描くことが多いです。

ゾウ、ライオンをモチーフにしたアキさんの作品の一例

▲ゾウ、ライオンをモチーフにしたアキさんの作品の一例

久保木亜紀さん
あとは、黒を絶対に使わないというのもこだわりです。本当の黒は“光がない”状態なので、人が見ることのできない色。
風景の中に黒いものがあっても、私にはどうしても黒には見えません。私の作品は私が見ている風景そのものを表現しているので、黒い絵の具を使うと自分の目に映る世界ではなくなってしまうんですね。

久保木亜紀さん

――色へのこだわりがよくわかりました。髪色についても伺いたいのですが、まずは初めてのカラーリング体験をお聞かせください。

久保木亜紀さん
大学生のときです。ずっと茶色にしたかったのですが、両親から「髪色を自由にできるのは20歳から」と言われていたので、20歳になってすぐにセルフカラーをして、ピアスも開けて(笑)。色はハニーブラウンのような自然な茶色でした。

▲ジョージアで暮らしていた2020年頃のアキさん

▲ジョージアで暮らしていた2020年頃の久保木亜紀さん

――海外でもカラーリングをしていたのでしょうか?

久保木亜紀さん
ジョージアに住んでいた頃は42歳。白髪が気になり始めた時期だったので、美容室でバイヤレージュを入れてもらいました。
ヨーロッパとアジアの中間にあるジョージアには黒髪の方が多く住んでいるので、美容師さんも黒髪の扱いに慣れていましたね。

――今の髪色はピンクのグラデーションが印象的で素敵です!

久保木亜紀さん
ありがとうございます。私のInstagramを見た美容師さんが「亜紀さんの絵のようなカラー剤があるよ」と教えてくださったのがきっかけでした。
いくつかカラーバリエーションがあるなかで、このピンク色が私の絵にそっくりの発色で! 今までは染めても自然な茶色ばかりだったので、こんな派手な色にしたのは初めてなんですよ。

――ピンク色を選んだ理由は何だったのでしょうか?

久保木亜紀さん
作品の制作過程をSNSで発信しているのですが、視聴者に楽しんでもらえる映像作りを考えたときに、自分が作品の世界観に入るという表現方法ができないかと思ったんです。
私自身が絵の一部になるために、まずはファッションを絵と同じような明るい色にして、次に髪色を変えました。自分の絵には黒を使わないのに、黒髪のままでは説得力もないかなって(笑)。
作品の世界に入るための最後の仕上げが髪色だったんです。

久保木亜紀さん

――髪色を染めたことでどんな変化がありましたか?

久保木亜紀さん
以前は「私ではなく絵を見てほしい」と思っていたので、SNSでも自分が絵の横に立つようなことはしませんでした。
今は自分も含めて作品と考えて、自分と絵のつながりを意識しています。SNSでの表現の仕方が大きく変わったと思いますし、自分に自信が持てるようになりました。
自分のことがお気に入りだと思えるようになったのは大きい変化でしたね。 

久保木亜紀さん

――やはりファッションなど身にまとう色にもこだわりがあるんですか?

久保木亜紀さん
髪や服、バッグやアクセサリーを選ぶときもそうですが、ポイントは自分のテンションが上がるかどうか。
年齢を重ねると周囲の目を気にして暗い色や無難な色を選びそうになりますが、そこで「これを身に着けて私は本当に気分がよくなるのか?」と自問するようにしています。

日本は派手じゃないこと、慎ましやかなことが美の価値観とされてきましたが、好きなものを身に着けて自分自身を幸せにしてあげることも大切にしたいです。

――久保木亜紀さんにとって髪色とはどんな意味をもつものですか?

久保木亜紀さん
その人の生活や生き方を感じ取れるものだと思います。私は今の色にしてから周りから「お仕事は何をされていますか?」と聞かれることが増えました。
地毛以外の色だと、環境が自由で特殊な職業だと思う方が多いのでしょうね。
若い方の場合は単純にファッションで染めているのかもしれませんが、30代以降になると髪色がおしゃれ以外にも意味をもつような気がします。
一番わかりやすい自己表現のひとつだからこそ、本当に好きな色を取り入れていたいですね。

夏に向けて新たなチャレンジも。
夢は「いつかアフリカへ」

久保木亜紀さん

――今後チャレンジしてみたい髪色はありますか?

久保木亜紀さん
次も自分の絵に使っている色を入れたいですね。今のピンクも気に入っているのですが、今度はターコイズグリーンも取り入れて、ピンクとターコイズグリーンのグラデーションに挑戦してみたいです!

――さまざまな国に移住経験のある久保木さんですが、今後行きたい場所はありますか?
久保木亜紀さん
いつかアフリカへ行って、サバンナを歩く野生動物たちを見るのが夢。動物園とは違った“あるべき場所”で生きている自然な姿に触れたいです。
特に身体の大きい動物が好きなのでライオンやキリン、アフリカゾウをこの目で見てみたい。そして、見たままの姿をキャンバスに描いてみたいと思っています。

久保木亜紀さん

――最後に、今後のお仕事の予定について教えてください。

久保木亜紀さん
今年(2023年)の7月1日〜8月16日に、沖縄のANAインターコンチネンタル万座ビーチリゾートで展示会があります。
ホテルに滞在しながら制作と展示の両方を行うのです。ライブペイントやワークショップなどのイベントも企画しています。期間中は描き下ろしイラストを使ったグッズも販売予定。どんなイラストを描くか、どんなグッズを作るか楽しみに準備を進めています。

取材を終えて

海外で様々な文化や人にふれ、自身の価値観が大きく変わったという久保木亜紀さん。
作品の世界観に入りたいとピンクの髪色にチャレンジした結果、今までよりさらに自分に自信がもてるようになったといいます。

久保木亜紀さんのように自分の価値観や“好き”を大切にすれば、毎日がもっと楽しく感じられるはず。
「思い切った髪色に挑戦したいけど、似合うか分からない」「周囲の目が気になる」という方も、まずはチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

最後に、久保木亜紀さんの心を明るく華やかにする「COLOR AKI's HEART」を紹介してもらいました。

久保木亜紀さん

COLOR  AKI’s HEART 「知らない場所へ行くこと」

初めての場所を訪れるといつも心が動きます。最近だと、今年愛媛県へ引っ越してきたときですね。
瀬戸内海を臨む景色は、空も、海も、島の影さえも、日本の伝統色で描かれたような優しい色あい。海外でも見たことのない淡いトーンの風景に目を奪われ「日本もいいなあ」と実感しました。

夫と一緒に近所を散歩するときも、必ず知らない道を選ぶようにしています。「あの花は何だろう?」なんて思うままに感想を言ったりして。
夫はあまり聞いていませんが(笑)。仕事で家にこもりがちな私にとって、初めての景色を見ながら歩くこの時間は最高のリラックスタイムなんです。


写真/吉田正之

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